Car Maintenance
1st Sep. 2005
2005年9月1日:ユーザ車検にトライ

 何でもDIYは結構好きなほうで、趣味の「釣り」では随分とDIYを楽しんでます。もともと車についても、基本的には「好き」なのですが、せいぜい自分でやれることと言えば、エンジンオイルの交換とか、切れたランプの交換、あとはタイヤの交換などです。

 2年前の病気以後、失業して再起するまでの間、3ヶ月ほど自動車の登録代行のアルバイトをしました。某自動車会社のディーラーから新車や継続検査、あるいは名義変更等の書類を預かって、関東一円の自動車検査登録事務所に出向いて書類を提出し、ナンバーや封印をもらってきたり、あるいは継続検査や名義変更が完了した新しい車検証をもらってきたり。



 何度も出向いているうちに、自動車の検査・登録というのが、どのように処理されているのかがわかってきました。また、何処の検査登録事務所にも「検査ライン」というのがあります。ここでは毎日、実際に車が持ち込まれて、保安基準に適合しているかどうかを、公的機関として検査をしており、それに合格すると車検証がもらえる、ということになります。
 アルバイトのついでに、検査ラインを見学したり、あるいは、ユーザ車検の手続きの流れなどを説明するパネルをみたりしているうちに、「いっぺんやってみようかな?」と、いう気になりました。

 自動車の登録代行のアルバイトで一番最初に行った検査登録事務所は、川崎市にある川崎検査登録事務所でした。ここはなぜか、いつ行っても空いていて、新車登録にせよ、継続検査の書類処理にせよ、とにかく早いんです。そして、アルバイトでもうひとつ知ったことが、継続検査については、自分の車を登録している所管検査登録事務所以外でも受けられる、ということです。自分の車は相模ナンバーですから、ユーザ車検も相模検査登録事務所じゃないと受けられない?と、思っていたのですが、他の事務所でもぜんぜん平気なのです。ということで、ユーザ車検を受けるなら、川崎検査登録事務所にしようと決めていました。

 もうひとつのきっかけは、「お金」です。これまでは車検というと、ディーラーに出すことがほとんどでした。厳密に言うと、車検はあくまで「検査」であって、国が定める保安基準に、最低限適合していれば合格になるのですが、ディーラーや町の自動車修理工場は、車検と整備がセットになっています。単純に高い・安いということを区別するのは語弊があります。車には、経年変化などで劣化・磨耗する部品や油脂類が沢山使用されています。中には重要保安部品として位置づけされているものもあります。また、一定期間乗っていると、調整がずれて来る部位も沢山あります。整備が悪くて、エンコする程度ならまだしも、こと重要保安部品に関しては、整備不良に起因して事故を引き起こす可能性があります。ですから、素人考えで、ただ安いからと、安易にユーザ車検に走るのは一考が必要であることは十分理解しています。ですから、当然、プロに任せるべきところはは任せる必要があるし、自分で弄った部分は自己責任負わなければなりません。ディーラーや自動車修理工場における整備には、資格を持った整備士が、保安基準に適合する部品や油脂類をきちんと使用して修理し、点検整備記録や分解整備記録にきちんと履歴を記載してくれるのですから、保証要素がある程度高いものと考えて良いと思います。
 しかしながら、ここ数年、特にディーラーの車検整備を見て振り返ると、継続検査にかかる手続きの部分、いわゆるソフトの部分での手数料が高い! と、思いました。これは、自分で登録代行のアルバイトをしたときにもらったバイト代を考えても、この部分を自分でやったら随分安いのに、と、思った次第です。ですから、本当の意味でベストな車検とは、一旦無整備で検査登録事務所で検査を受け、不合格箇所をピックアップしてもらう。その後、不合格箇所のみを、ディーラーに持ち込んで整備してもらう、というのが理屈としてはベストかもしれません。とは言うものの、検査登録事務所の検査ラインにおける検査は、実に短時間で、逆にこの程度の検査で大丈夫なのか? と、不安になったりもします。検査項目は沢山あるにせよ、検査官だって人の子ですから、見落としだってあります。そういう意味では、指定整備工場として認可されているディーラーのサービス部門や、資格をもった整備士のいる自動車修理工場は、ある程度時間をかけて点検をして、予防処置的立場で整備をしてくれます。しかし、この予防処置も、オーバースペックになると、当然金額に影響します。特にディーラーの整備は、十分すぎるぐらい、故障や事故を未然に防ごうとするあまり、見積もりの段階では、これも交換、あれも交換、ということを言ってくるケースがあります。そこまでやったにせよ、故障するときは故障しますし、どのあたりで納得するか? 結局はどんな場合でも、最後は車を運転するユーザの自己責任になります。まあ、もちろん、点検整備記録簿にきちんと記載された、直近の保安部品の交換などで不備があった場合には、ディーラーは全面的にフォローしてくれますけどね。だとしても、もともとユーザには、日常点検、始業点検が義務付けられています。「私は素人だから」と、整備不良が原因で事故を起こしたとしても、ユーザに課せられた日常点検や始業点検について、必ず問われます。乗るならもっと車を知らなきゃいけないんです。このあたりのことを十分に納得して、それでもやってみるか! となれば実行です。
 
 ちゅうことで、「自己責任」を覚悟して、ユーザ車検を受けてきました。

1.事前の準備
1)知識の習得
この時代、インターネットの情報は大変貴重です。奇特にも、ユーザ車検に関する情報を、丁寧に説明してくれているサイトが沢山あります。「ユーザ車検」というキーワードで検索してみると、沢山の有用な情報が得られます。こういったサイトで、情報を得て、イメージトレーニングをするのが手っ取り早いです。

2)車の状態の把握
知識をある程度習得したら、今度は車の状態の把握です。実はこれがもっとも厄介です。自分の車の状態は自分が一番よく知っている・・・べきなのですが、車に関する知識は人それぞれ。「ボンネットなんて自分で開けたことないや」、なんていう人も居れば、公的な資格を持っているわけじゃないけど、プロの整備士や、ディーラのサービスマン並みに、車のことに精通している人もいます。ですから、まず、自分はどの程度知っているのか?ってことを基準に、車の状態を把握するしかありません。
 じゃあ、ボクの場合どうか? んー、「何かおかしい」とか、まあ、一応これでも20年車に乗っていて、正直なところ、さまざまな故障や、事故などにも遭遇していますから、そういった経験をした部分については、その時々の修理や整備を、極力ディーラーや整備工場で立ち会って見る様にしてきましたから、年の功的な部分での知識・経験はあります。まあ、それでも素人の域は脱していないでしょう。素人なりきに、始業点検の項目や、日常点検の項目の必要性を、ここで改めて思い出して、自分の車についている整備手帳にしたがって、自分でまず点検することが出来れば、少なくともユーザ車検を受けるに値すると、私は思います。
 おかしい、と思った部分に対して、自分で直せるところは直す。そして、自分では手に負えない部分は、速やかにディーラや自動車修理工場に持ち込んで点検・整備してもらう、ということが必要です。ほったらかしにして「まあいいや」と、乗ってしまっている人は、仮に運よくユーザ車検にパスするとしても、後々のことを考えると、やめておいたほうがいいと思います。

3)書類の準備
公的機関=お役所、の検査というのは、実地の各種検査の前に、「書類」による手続きと、「納税」がつきものですね。用意する書類は下記のとおりで、記入が必要な書類の記入方法については用紙を受け取った窓口などで尋ねると教えてくれます。
 −1.現在の車検証:有効期限の1ヶ月前から、車検が受けられます。
 −2.継続検査申請書:別名OCRシートと言います。この用紙は、検査登録事務所で事前に入手しておく必要があります。有料でして、1枚
30円でした。書き方については、事務所に見本があります。OCRシートの記入は鉛筆書きです。
 −3.自動車重量税納付書:車検=正式には継続検査と言いますが、その都度、車の重量に応じて納税が義務付けられています。重量相当額の印紙を、登録事務所敷地にある印紙売りさばき所で購入して貼り付けます。ボクの場合、日産のサニーカリフォルニアで、重量は1001kg〜1500kgの間になりますから、重量税は
37800円でした。用紙はOCRシートとともにもらいました。印紙=税金または手数料、を貼付する書類はオマケのようです。
 −4.自動車検査表:検査登録事務所の検査ラインで受ける検査項目が記載されています。検査手数料として、僕の場合総排気量1498ccの日産サニーカリフォルニアで、分類が「小型」になりますので
1400円の印紙を貼付します。
 −5.納税証明書:自動車に乗っていると、毎年4月末頃に納税通知書が郵送されてきます。銀行や郵便局で納税をすると、領収書のほかに継続検査に必要な納税証明書に領収済印が押されて返されます。これをきちんととっておいて、継続検査書類とともに用意します。検査登録事務所敷地内の都道府県税事務所に、この納税証明書と、必要事項を記入した継続審査申請書=OCRシートを持ち込むと、用紙に納税確認済みのスタンプを押してくれます。納税証明書はここで回収されます。また、納税証明書は意外と紛失してしまう人が多いのですが、その場合でも構内の都道府県税事務所で納税確認をしてもらうことが可能で、ここで納税確認の書類をもらって手続きすることも可能です。
 −6.自賠責証明書:自賠責保険の証書です。現在の車検証の有効期限をカバーするものと、継続検査が完了したあとの新しい車検証の有効期限をカバーするものの2枚が必要です。普通車の場合、新しい車検証の有効期限が2年間=24ヶ月ですから、新たに24ヶ月分の更新保険料を支払って、証明書を確保しておきます。自賠責保険は、検査登録事務所構内でも、必ず更新手続きのできる場所がありますから、そこで更新していまうのが手っ取り早いです。僕の場合には24ヶ月の更新で
27630円でした。
 −7.リサイクル券
2005年1月から施行された自動車リサイクル法によって、自動車の所有者は廃車時に必要なリサイクル料金を支払うことになりました。詳細は、こちらをご参照下さい。手元に車検証があれば、このサイト上で金額の計算も可能です。リサイクル料金の支払いは、検査登録事務所内に自動の発券機があって、車検証に記載された車台番号その他の情報を入力すると発行され、その用紙を窓口に持参して、記載料金を支払い、領収印をもらうと同時に、現在の車検証表面の左下に、リサイクル料金を支払い済みであることの確認印をおしてくれます。リサイクル券はこの時点で別途保管とし、継続検査に際しては、車検証の確認印があるので、リサイクル券そのものの提出は必要ありません。

4)実際の検査
私の場合、川崎検査登録事務所で検査を受けましたのでその様子を書きます。

川崎検査登録事務所にはA・B、2種類の検査ラインがあります。検査ラインは見学できるようになっていて、不安な場合には事前に検査の様子を見学することも出来ます。下の写真は私の1台前に検査を受けている人の様子です。ラインはAラインで、各種の診断、検査結果は基本的にすべて自動で行われます。

ラインに入る前、検査官が車周辺の検査をします。

ボンネットは事前にフックを外しておき、いつでも開けられるようにしておきます。

まずは旧車検証と自動車検査表を検査官がチェック。続いてボンネットを開けて、車台番号の照合確認です。
クラクション、右・左ウインカー、ブレーキランプ、前照灯、フォグランプなどなど。とにかく灯火類は、ついているものはすべて正常に点灯・点滅しなければダメです。これらのチェックが無事済むと、ボンネットは半フックの状態でゆっくりとラインに進みます。

ラインに入って最初にチェックされているのがサイドスリップという検査です。このチェックの途中でハンドルを切ってしまうとNGです。直進したときに、タイヤホイールのブレが無いかどうかのチェックですから、ハンドルを切ってしまうと、自動検査ラインの計測装置は、それを「ブレ」と認識してしまいますので要注意。



問題なくクリアしてさらに前進すると、今度は前後輪をローラーのようなものに乗せます。
ここでの検査は、スピードメーター・前照灯のビームチェック(照射角度)・フートブレーキ(ペダル)・パーキングブレーキ(サイド)のチェックです。

前方の電光掲示板に、検査項目が順次指示されますので、それにしたがって、アクセルを踏んだり、思いっきりブレーキペダルを踏んだり、サイドブレーキを引いたり、ヘッドランプを点灯したり、ということになります。

スピードメータのチェックは、メーターを見ながら徐々にアクセルを踏み、40km/hとなったところでパッシングをします。
ブレーキについては、動作は落ち着いて、ただし、ペダルはとにかく思いっきり深く踏み込む。サイドブレーキもしかり。思いっきり引くということになります。

前照灯については、自動検査装置が照射角度を自動計測します。この検査で落ちる人が多いと聞きましたが、僕の場合、この検査は特に事前調整せずともOKでした。

これらのテストがOKとなったら、今度は車を降りて、排ガスのチェックのためのプローブを、排気管に差し込みます。

これも問題なくクリアしました。

検査結果を自動印字する機械がありますので、そこに自動車検査表を差し込みますと、下記のように用紙左側に検査項目ごとに丸印が印字されます。


この調子で行けば、一発合格かな?と、期待したのですが、最後の検査で引っかかりました。

最後の検査は、検査官による、下回りチェックで、ラインの一番最後のところに車を進めます。「エンジンを止めて」と指示され、それにしたがってエンジンを止めますと、検査装置が前輪部分を思いっきり左右に振動させるんですね。知らないとちょっと驚いちゃいますけど、別に車を壊そうとしているわけではありませんので、大きく揺れても焦らないで大丈夫です。

さて、何処で引っかかったか?

なんと、ステアリングギアブーツという、ハンドルから車輪に操舵動作が伝達される機構のある部分で、左側の蛇腹状になったゴム製の部品に亀裂が入っていて、中のグリスが完全に抜けていました。

似たような機構として、ドライブシャフトにも、シャフトブーツというものがあって、僕の乗っているカリフォルニアは、このブーツがよく切れるんですが、ステアリングの方はチェック漏れでした。残念。

さて、困りました。ここで一旦検査打ち切りですが、検査官いわく「今日の午後4時までに修理して持ってきたら、再検査は特にお金が掛かりませんよ」とのこと。

ニッサンの場合、確か磯子にパーツセンターがあったっけな。そしてその隣は確かディーラーで、修理も受け付けてくれるはず。ということで電話をしたら、隣のパーツセンターにも当該部品があり、今、修理工場も空きがあるから午前中で修理可能とのお返事。東扇島から磯子まで湾岸走って、10時過ぎに到着。2時間ほどで交換修理と、アライメント再調整をしてもらいました。

その証拠としての分解整備記録が下記です。



お昼前に無事修理完了。費用は30000円ちょっと掛かってしまいましたが、直らない事には検査はパスできませんからね。

午後1時からの検査に十分間に合って、午後もまた、何故か空いていて4台目でした。

午前中に合格となった項目の中で、サイドスリップだけは再度検査を受けるように言われていました。これは、操舵機構を一旦分解して修理をしているのが理由です。問題なくパスして、その他の検査は飛ばして再びラインの最終項目、下回りの再検査です。

検査官は午前中と同じ方でしたので、修理完了した部分のみチェックで「はい、合格です」

ということで午前中×印だったところも、横に○が付いてOKとなりました。

最後に窓口に自動車検査表その他一式を持ち込んで、待つこと5分、名前を呼ばれて渡されたのが、下の新しい車検証とステッカーです。

ステッカー、新しいものは小さくコンパクトになりました。古いステッカー剥がすのにちょっと手間取りましたけど、無事、検査合格です。





なお、24ヶ月点検は、車検前に実施していない場合には、事後、実施しなければなりません。ただし、自分で検査して、点検記録簿に記録しておきましょう。

※なお、ユーザ車検で合格しても、ディーラーや自動車修理工場で行われる「整備」をしたわけではありませんので、整備不良に起因する事故等は当然すべて自己責任になります。始業点検・日常点検はこまめに行って、自分で整備が出来ない部分については、ディーラーや自動車修理工場のプロに頼んで整備・修理してもらいましょう。